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2009年06月24日 インフルエンザ騒動から見えた現実
「鳥だと思ったら豚だった?」「どうしたら家族や自分自身を守れるのか…」「このままでは地球はどうなっちゃうの?」―こんな恐怖症が日本を覆い尽くした。
インフルエンザ・パンデミックについて日本のメディアの洪水報道は、明らかに過剰反応だ。感染者の多いカナダでは発生当初も扱いは小さく、トップはアイスホッケー、2〜3面は山火事と殺傷事件、インフルエンザは4番目。今も極めて小さい扱いで、殆ど報道されていないという。本紙記者はキューバ取材の折りにメキシコの空港に滞在したが、空港周辺でマスクをしている通行人は皆無と言っていい状況だった。
日本の騒動には、「国家による危機管理の実践」という悪臭がする。今回の騒動でほくそ笑んでいる者の中に、「国民保護計画」だの「有事体制づくり」だのを積極的に進めてきた好戦的な連中の顔があるに違いない。
私たちは、国際空港での検疫で数時間も留め置かれ、「疑いのある者」は数日間も停留され、解放された者も連日保健所の監視に迫られ、学校施設などが一斉に閉鎖されるのを体験した。しかもそれは検討期間などほとんどなく、ほぼ満場一致で決定され、実行されていた。その「判断」の材料になるものはほとんど政府発表でしかなかった。しかもその情報は間違い・偏りのオンパレードなのだから、大本営発表というより他ない。
この「体験」がもたらすものが恐ろしい国家統制システムでないことを願うが、民衆にとって必要な情報は何も伝えられていないのが現実だ。
タミフルに根拠なし
新型インフルエンザに効果があるとされる治療薬・タミフルだが、「重症化を予防せず、新たな感染も予防しない」(NPO法人医薬ビジランスセンター〔薬のチェック〕 浜六郎氏)といわれる。タミフルはウイルスを殺す(失活する)ことはできない。米疾病対策センター(CDC)や世界保健機関(WHO)も、「米国ではほとんどの感染者が軽症で、タミフルなどの治療薬を投与しなくても回復している」としている(4月30日、岡部信彦・国立感染症情報センター長)。
しかもウイルスにタミフル耐性ができて、ますます効かなくなっているという。05年12月、オクスフォード大学の研究者がタミフル耐性をもつ鳥インフルエンザウイルスの発生を発表している。また08年3月には、ベトナムと香港でのタミフル耐性ウイルスが報告されており、インドネシアでも耐性の脅威があるとされた。日本でも季節型インフルエンザについて、厚労省が「今シーズンのインフルエンザウイルス35株を検査し、34株からタミフル耐性ウイルスが検出された」と報告している(09年1月16日報道発表資料)。
それどころか、タミフルは幼児の突然死や若者の「異常行動」など深刻な副作用が確認されている。妊婦や新生児への使用は極めて危険である。そのため07年3月には厚労省がタミフルの10代への使用を原則禁止とする通知を出していたのだが、これがいつの間にかうやむやにされ、今回の騒動に便乗してついに事実上解禁された。上田博三・厚労省健康局長は「新型インフルエンザのリスクが副作用のそれを上回るため、(タミフルを)使用できる」(4月30日、衆院厚生労働委員会)と答弁している