<<前の記事へ| 次の記事へ>>
2008年11月10日 タミフル効かず、インフルエンザに異変
国は新型インフルエンザの大流行、いわゆる「パンデミック」が現実となった場合、国内で最大64万人が死亡すると想定、対抗策としてインフルエンザ治療薬「タミフル」の大量備蓄を進めていますが、実は1つ問題が生じています。切り札であるはずのタミフルが、効かないウイルスが全国で見つかっているのです。
今年のインフルエンザは、早くも流行の兆しが出ています。大阪・堺市の東百舌鳥小学校では先月、1クラスが学級閉鎖されました。
「まだ暑い時期だったので、本当にインフルエンザ?という感じ。30数年教師をやっているが、こういう経験は初めて」(東百舌鳥小学校 今井好隆校長)
9月下旬、1人の児童がインフルエンザを発症し、2週間後には同じクラスで突然20人が欠席。そのうち10人がインフルエンザと診断され、学級閉鎖となったのです。毎年、学級閉鎖はありますが、こんなに早いのは初めてだと言います。
「(学級閉鎖は)だいたい12月など寒い時期。2か月とはいかないが、1か月半は早い感じ」(東百舌鳥小学校 今井好隆校長)
9月下旬といえば、季節外れの冷たい風が日本列島を覆い、急に冷え込みました。その後また暑くなりましたが、この時期に風邪が大流行。気温が突然下がって、インフルエンザウイルスが活発になった可能性も考えられます。
インフルエンザ治療薬として知られるタミフル。服用後の異常行動との関係がクローズアップされることが多かった一方で、小児科を中心に現場の医師からは薬としての効果が評価されています。それが・・・
「鳥取県は30%以上も高かった。理由は分からない。本当に分からない」(国立感染症研究所 氏家誠研究員)
国立感染症研究所がインフルエンザに感染した患者のウイルスを緊急調査した結果、なんとタミフルが効かないウイルスが増えていることが分かりました。
既に全国9県で確認され、特に鳥取県が30%以上の高い確率で見つかっていて、突出して多かったといいます。
実はタミフルが効かないウイルスは、昨シーズン世界中で流行していました。最も発生率の高かったノルウェーから、瞬く間にヨーロッパ中に拡大したとみられています。このため、日本にも広がっている可能性が指摘されていました。
「外から入ってきた可能性も否定できないし、鳥取県の中で新たに耐性株が発生したという可能性も、2つの可能性が考えられる」(国立感染症研究所・インフルエンザウイルス室 小田切孝人室長)
全国的に見ると、問題のウイルスの発生頻度はまだヨーロッパなどよりははるかに低く、もしタミフルが効かないウイルスに感染したとしても、「リレンザ」などの別の治療薬が有効とされているため、急場をしのぐことはできます。
Q.患者への影響は?
「(タミフルが効かないウイルスが)増えてきていることになれば、タミフルを使う治療方針に影響があるかもしれない」(国立感染症研究所・インフルエンザウイルス室 小田切孝人室長)
切実なのは街の診療所です。タミフルが効かない症例が全国一多かった鳥取県の隣、兵庫県のこちらの小児科では、実は早くから異変を感じていたといいます。
「昨シーズン、タミフルが効いていない患者を2〜3人診た。すべてのインフルエンザにタミフルが必要ではないが、タミフルを使いたい患者も当然いるので、選択肢が無くなるのは非常に大きい」(筒井孟医師)
新型インフルエンザへの警戒も強まるこの冬、まずは感染しない対策を立てておく必要がありそうです。