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2008年03月05日 官僚個人に自覚迫る 薬害エイズ最高裁決定『事なかれ』許さず

2008年3月5日 朝刊東京新聞

最高裁決定を受け、記者会見する川田龍平参議院議員=4日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで

<解説> 薬害エイズ事件で元厚生省生物製剤課長の松村明仁被告(66)を有罪とした最高裁決定は、「何もしなければ罪にはならない」という官僚の事なかれ主義への厳しい断罪となった。個人への刑罰があり得ることを示した最高裁の判断は、官僚一人ひとりに責任の自覚を強く迫ったといえる。 

 行政判断で個人の責任は問えない。これが霞が関の官僚組織の常識だった。

 しかし、決定は「国に賠償責任が生じるような場合でも、公務員の刑事責任には直結しない」との基本的な考え方を前提とした上で、今回のケースに関しては国(当時の厚生省)以外には有効な防止措置がとれなかった点を重視。重大な危険を漫然と放置した過失が認められれば有罪、との結論を導いた。

 決定が言及したように、責任は被告一人にあるわけではない。個人犯罪ではない事件で、あえて個人の刑事責任を問う意義は、無責任体制を許さないことにある。

 薬害は、サリドマイドやスモンからC型肝炎まで、何度も根絶が誓われてきた。それなのに繰り返される一因は、いったい誰が責任をとるのか分からないシステムの中で、官僚の逃げ得が許されてきたためだ。

 「猛省」したはずの薬害エイズ事件の後も、薬害C型肝炎問題で、厚労省は感染患者リストを隠ぺいし、発覚後も対応の遅れが批判を浴びた。国民の命に直結する官庁なのに、変わらない体質が指摘された。

 「職員の人たちが、どこまで責任の重みを自覚して働き方を変えてくれるかにかかっている」(川田龍平参議院議員)。製薬会社と行政、医療従事者の三者の癒着から生まれる薬害。この「産・官・医」の連鎖を断ち切るためには、責任の所在を明確にして危機管理をする組織全体の改革が求められる。そうならなければ、今回の決定は意味を持たない。 (出田阿生)

『謝罪の言葉聞きたい』川田議員
 「今までの厚生省は隠ぺいと無責任の繰り返しだった。真相を明らかにし、薬害を今後繰り返さないことが必要だ」。最高裁決定を受け、東京HIV訴訟の元原告の川田龍平参議院議員(32)は四日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、再発防止をあらためて求めた。くしくもこの日午前、ジャーナリストの堤未果さんとの結婚を笑顔で発表した川田氏だが、有罪確定には終始厳しい表情を崩さなかった。

 血友病の権威と言われた故安部英元帝京大副学長は一審で無罪判決を受け、その後、死亡により公訴棄却となった。川田氏は「(松村被告の)有罪確定を聞いて、安部さんの事件が最後まで争われなかったことをあらためて悔しく思う」と悔しさをにじませた。

 松村被告に対しては「責任を認め、心から謝罪の言葉を聞きたい」。

 帝京大病院の血友病患者が初めてエイズと認定された一九八五年の時点の状況が刑事裁判で争われた。しかし、米国で血液製剤の危険性が指摘され始めた八二年の時点でなぜ防げなかったのか、なぜ被害が拡大したのかは、いまだに真相が明らかにされていない。川田氏は「今後も厚労省側に真相究明を働きかけたい」と述べた。

 <薬害エイズ事件> エイズウイルスが混入した輸入非加熱血液製剤を投与された血友病患者ら1400人以上が感染し、600人以上が死亡した戦後最大級の薬害事件。松村明仁被告のほか、医師と製薬会社元社長3人が業務上過失致死罪で起訴された。血友病の権威で医師としての責任を問われた安部英(たけし)元帝京大副学長は、一審の無罪判決後、認知症となり公判停止。その後死亡して公訴棄却となった。旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)の元社長2人は、禁固1年6月、同1年2月がそれぞれすでに最高裁で確定。もう一人の元社長も禁固1年4月の実刑判決を受けたが、死亡して公訴棄却となっている。

2008年3月5日 朝刊東京新聞

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