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2008年01月22日 新薬の治験、石川で 新型インフルエンザに効果 研究の先駆、評価受ける
季節的インフルエンザの患者に臨床試験を説明する岩城医師 =金沢市駅西本町2丁目
鳥インフルエンザウイルスに世界で唯一、高い治療効果が認められた新薬の臨床試験(治験)が石川県内で二十一日までに始まった。金沢市に長年インフルエンザ研究を続けてきた医師がいることから、金沢が全国的な治験の中心地に選ばれた。新薬は二〇〇九年度にも季節的および新型インフルエンザの特効薬として発売予定で、治験に注目が集まっている。
鳥インフルエンザが人に感染しやすく変異した新型インフルエンザの流行に備え、日本などは治療薬「タミフル」の備蓄を進めている。
しかし、鳥インフルエンザ患者の一部から、タミフルの効かない耐性ウイルスが見つかり、効果に疑問が生じている。新型インフルエンザが流行すれば、最悪の場合、死者は国内六十四万人、全世界で五億人に上るとされ、特効薬の開発が急がれていた。
治験を行う新薬は、富山市内に研究生産拠点を置く富山化学工業(東京)が開発した「T―705」。鳥インフルエンザだけではなく、現在流行しているようなA、B型の季節的インフルエンザにもタミフル以上の有効性が期待されている。
県内での治験は、日本臨床内科医会常任理事を務める岩城紀男医師が主導し、金沢と小松の十内科医院で実施する。
岩城医師は約十年前から、全国的なインフルエンザ研究班を組織し、集めた症例から「タミフルはB型インフルエンザに効果が薄い」などの新発見や迅速診断法の確立、毎年の流行状況やワクチンの効果などを世界に発表してきた。
今回は患者に投与する初めての試験で、季節的インフルエンザの患者が対象。岩城医師は「世界が待ち望む薬の治験が行われることは石川の医療にとって大きな進歩だ」と話し、県民に協力を呼び掛けている。
鳥インフルエンザ 鳥類がインフルエンザウイルスに感染して起きる病気。1997年以降、病状が重く感染力も強いH5N1型ウイルスが鶏などの家禽(かきん)から人へ感染する事例が相次いだ。人から人への感染はまれだがベトナムなどで確認されており、今月10日にも中国で父から子への感染が明らかとなった。流行が長期化しているため、遺伝子が人への感染力が強い「新型インフルエンザ」に突然変異し、世界的な大流行を起こす恐れが高まっている。北國新聞社【1月22日03時16分更新】