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2008年07月31日 タミフル:異常行動、服用後が高率…岡山大教授ら指摘
インフルエンザ治療薬「タミフル」(リン酸オセルタミビル)について、厚生労働省の研究班(班長・広田良夫大阪市大教授)が7月に発表した解析は誤りだとの指摘が医師たちから相次いでいる。班は「タミフルを飲んだ患者は、異常行動を起こす率が飲まない患者より約1割低い」との解析結果を示したが、指摘によると「飲んだ患者の方が約5割高い」のが正しい結果という。班の解析については厚労省の安全対策調査会の作業部会が評価を検討中で、近く調査会に報告する。
班は昨年12月の「1次予備解析」でも「タミフルを飲んだ方が異常の率が約5割低かった」との結果を発表し、誤りを指摘されていた。取材に対し広田教授は「ノーコメント」としている。
指摘しているのは、津田敏秀・岡山大教授(臨床疫学)、粂和彦・熊本大准教授(睡眠医学)、浜六郎・医薬ビジランスセンター理事長(内科)ら。
調査は06年12月〜07年3月、インフルエンザで医療機関を受診した患者約1万人を対象に実施。タミフル服用と、うわごと、おびえ、泣き出すなど軽い症状も含めた「異常行動」との関係を調べた。
班は「タミフル使用者」7487人のうち服用後に異常行動を起こした人を889人(11.9%)と計算。一方で「非使用者」2228人のうち、異常行動は286人(12.8%)だったとした。
しかし「非使用者」のうち99人は、実際はタミフルを飲んだが、飲む以前に異常行動を起こした患者。全く飲まなかった患者だけの人数は2129人で、異常行動は187人(8.8%)だった。99人の異常行動を、飲まなかった患者に加えたため、「非使用者」の異常の率を過大に算出したと指摘されている。
また班は「使用者」では服用以降に生じた異常行動を数え、「非使用者」では受診後の異常を数えた。受診と服用には約半日の間があるとみられ、「非使用者」の方が長期間での異常率を出したことにもなっている。
指摘を受けて、患者団体「薬害タミフル脳症被害者の会」は、解析の修正を求める文書を厚労省に送った。
厚労省医薬食品局安全使用推進室は「解析の妥当性についてはコメントできないが、班の結果でタミフル服用と異常行動の因果関係が否定されたとは考えていない」と話している。