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2013年04月14日 『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No162

(2013.04.13号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No162

イレッサ薬害最高裁判決に対する声明

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)  浜 六郎

2013年4月13日

声明PDF版

最高裁判所は、4月12日、薬害イレッサ東日本訴訟について、アストラゼネカ社の法的責任を否定する判決を言い渡した[1]。先日すでに、国に対する上告の棄却決定がなされており、また、西日本訴訟についても本日、同様の判断がなされた。

このことから、2004年の提訴から8年余にわたる薬害イレッサ訴訟は、国と企業の責任を否定する判決が、東日本でも西日本でも確定し、終結したことになる。 しかし、薬害を起こしたイレッサの検証は終結していない。検証はこれからであると考える。そこで、合計8通の意見書を作成し[2]、大阪で4度、東京で2度、イレッサの害を証言するために法廷に立った医師としてこの裁判を振り返り、検証のはじまりに際して、問題点の本質がどこにあるのか、を指摘しておきたい。

不正行為を容認した判決

地裁ならびに高裁の判決は、アストラゼネカ社が、動物実験で開始10日目に肺虚脱で死亡したイヌの所見を慢性肺炎と偽ってイレッサの関与を全否定し、臨床試験担当医に対してもその情報を提供せず、臨床試験の初期にわずか50mgの使用で重篤な害反応が生じた例を無関係として追跡せず、有意に増加した血栓塞栓症の症例も無関係とし、第Ⅱ相の段階から、34人の早期死亡の94%(32人)の因果関係を完全否定し、日本でイレッサにより死亡した例があるのに死亡例なしと判断したことをすべて妥当とし、さらにはそのアストラゼネカ社の提供資料による国の審査を妥当とした[2]。また最高裁は、それらの判断をすべて妥当とし、追認した[1]。

これらの判決は、動物実験から臨床試験の段階および申請資料概要の作成の段階でも、虚偽の記載や虚偽の書類作成が疑われている被告所属の特定人物の見解のみを鵜呑みにして出されている。犯罪が疑われている犯人の作成した証拠のみを採用し、客観的な証拠を何ら吟味することなく不採用とする、という、あってはならない判断方法である。

薬剤として欠陥がないことが事実であれば、米国でいったん市販されながら、なぜ販売停止となったのか、なぜヨーロッパで販売されなかったのか、その理由の説明がつかない。

イレッサ薬害を検証せずして薬害は追放できない

このような、メーカーと国による不正行為が何ら批判されないならば、今後日本から、薬害は一切なくならないであろうし、むしろより広く薬害を蔓延させることになるであろう。薬害肝炎を経て、薬害再発防止のための検討がなされているが、極めてむなしい絵空事に終わることを憂慮する。

世界の流れに逆行する判決

おりしも、製薬企業による臨床試験のデータ隠しが頻繁に発生していることから、医薬品の利益を誇張し、害の過小評価がまかり通っていること、その結果、多くの人々が知らず知らずのうちに効果のない治療を受け、不必要な害にあっていることが世界的に注目され、製薬企業に、すべての臨床試験結果を開示させる必要があることが叫ばれている[3,4]。

こうした世界的な動きに対して、イレッサ薬害裁判では、時代の動きを逆行させる判決が次々になされた。

イレッサ薬害の本質は、欠陥薬剤の承認・販売、そのための操作

弁護団をはじめ原告を支援する人たちのこれまでの努力は貴重であった。しかしながら、多数の意見書を作成し[2]、6度法廷に立った者として、この裁判を振り返り、ここで、弁護団[1]、および支援する科学者・医療人[5]に対しても、あえて苦言を呈しておきたい。

このイレッサ薬害による死亡被害は、企業が、副作用が少ない夢の新薬であるという宣伝を行い、添付文書の警告も不十分であったために起きた、という点が問題の本質ではない。もっとはるかに本質的な理由によって生じた薬害である。本質的な重大な欠陥を抱えた化学物質であるものを市場に出すために、動物実験や臨床試験の各段階でデータ操作を行い、あたかも安全であるかのように見せるという犯罪行為によって生じた薬害であった。

その点への切り込みが弁護団には不足し、宣伝や添付文書の記載不十分、要望書下書きといった、ある意味、些末な問題に論点が絞り込まれてしまったために、裁判所の判断を誤らせてしまったのではないか、と考える次第である。あえて、苦言を呈するというのはこのことである。

裁判は終わってもイレッサ薬害は続く

原告らに対して言いようのない苦しい思いを強いることによって、この裁判は終了しようとしている。この裁判に意味があったとすれば、かろうじて、医師の使い方が慎重になり使う患者数が減少したことがあげられよう。しかしながら、原告らの被害は何ら救済されていない。イレッサの使用人数が減り、薬害裁判は一応終了したとしても、イレッサは今も薬害を作り続けている。承認が取り消されず使い続けられる限り、イレッサで利益を得る患者よりも無駄に死亡する人の方が多い[2]ということに変わりはないからである。

イレッサ薬害の本質の検証を

この事件を検証するためには、医学的な欠陥と、製薬企業および国のデータ隠しなど科学的不正があったことを指摘する必要があり、そのためにも、全面的なデータ開示[3,4]をメーカーと国に迫る必要がある。

データ隠しがあったことは、すでに明らかである。2003年、メーカーや国にデータ開示を裁判で求めても、開示を拒否していたが、裁判の進行とともに、開示しないことにメディアが注目し、問題化しそうになって、動物実験結果を部分開示し[6]、また、臨床試験の死亡や重篤例のケースカードを、裁判所の命令でようやく開示し[2]、それを検討することで、それまで不明であったことが多数明らかになったからである[2]。しかしながら、非常に残念なことに、それらの事実を裁判所は徹底的に無視した。また、市販後に実施された臨床試験のデータをメーカーに求めても開示を拒否している。

まずデータ開示を

これらのデータを開示させ、それを用いた適切な科学的な検証によってこそ、無効あるいは有害な薬剤を追放することが可能となる。

その上で、イレッサの、物質としての妥当性の検証が科学的になされなければならない。私は現在、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害の効果と害を検証する作業をコクラン共同計画の一員として行っている[7]が、イレッサには検証すべき課題が大いにあるということを、世界に発信する所存である。

参考文献
1.最高裁判決に対する薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団声明、最高裁判決
2.浜六郎、イレッサの毒性・本質的欠陥に関する意見書8通
3.すべての臨床試験のすべてのデータへのアクセスが必要
4.英国医師会雑誌(BMJ)のキャンペーン
5.薬害イレッサ訴訟の最高裁における公正で科学的な判決と薬害イレッサ問題の全面的な解決を求めるアピール
6.イレッサで「イヌに肺炎」が判明-毒性データはやはり隠されていた
7.タミフルの効果と安全に疑問:コクラン研究

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No162

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